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ぼくらのクローゼット

埋もれている価値観の中から新しい楽しみと
生き方をいっしょに見つけていくメディア

意外な訪問者

坂口典和さん ~生きる~

今年もいよいよ残すところ数日となりました。
どんどん時が駈けてゆく。。。この頃とみにそう思います。
「光陰矢の如し」という誰もが知っていることわざですが、「時間」という言葉がなかった頃は「光=日」と「陰=月」で「時」の概念を表していたようです。「光陰」という言葉は日常の会話では使われなくなりましたが、「月日」はよく耳にしますね。
少し前まで中学生の娘が、「月日は百代の過客にして。。。」という「奥の細道」の冒頭部分をよく口に出して覚えていました。
話が横に逸れますが、奥の細道の冒頭部分、人生をある程度噛みしめた大人の心にじわじわ沁みる名文です。自分が中学生の時、「平家物語」の冒頭と並んで、覚えるのが面倒な昔の文章くらいにしか思っていませんでした。人の心は、変わるものです。

前回の寄稿では、農業は土地に縛られるので一処に住み続けるも意外な訪問者があり。。。ということを書きました。そして、その後になんとモザンビーク(何処?)から3人の農民の方々が来られました。

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モザンビーク。。。アフリカというのはなんとなく分かったのですがそれ以上のことは分からず、思わず地図で探しました。
南アフリカ(これは有名)と接した北側にあります。それ以上は、何も調べませんでした。

そして、実際彼らに接しての第一印象は、「何語をしゃべってるのだろう」でした。聞きなれない言葉やなあ。。。
「オブリガード」。。。あ、ポルトガル語です!(ありがとう、の意)
で、何でポルトガル語なんやろう。。。あ、ポルトガルの植民地でした。

彼らはとても恥ずかしがり屋の多い北部の出身で、3人中唯一の女性の方はこちらが話しかけても目も合わせてくれませんでした。


「こんなに雑草を生やしたらだめだよ~」と一人の男性に言われました。
そして、先程の女性はささっとその雑草を暫く取ってくれていました。


やっぱり、百姓同士の交流はいいなあ、と感じ入ったものです。

 

畑では終始穏やかな空気に包まれるも、彼らの来日理由はかなり深刻で、母国での日本とブラジル共同の乱開発により土地を追い出される農民を代表して国会議員や学者の方々に直訴しにやって来たのでした。なんと、彼ら3人のうちの2人は抵抗運動を展開する29000人の農民グループの代表と副代表なのです。


それでも、畑では農民同士がお互いに興味を持ったことを相手に訊いて、風が吹いて。。。


心を許す、というか、心を交感するというか、温かで濃密な時間でした。

 

そして、話は変わりますが、最近、先に触れた中学生の娘の三者面談に行ってきました。

「お父さん、ひげ剃ってきてや」
「。。。ん、お父さん、なんか臭い。きのうの晩、お風呂入ってへんやろ。お風呂入って来てや」、
「絶対長靴で来んとってや。絶対やで」


「うるさいねん、おまえは!
なんでそこまで指図されなあかんねん。
もう、怒った。
風呂も入らんとひげも剃らんと学校に行って、おまえの担任の先生に荒々しい農民の姿をみせつけたるわ!」(担任の先生は、若い女子先生)

と言い放つも、娘は泣きそうな顔をしてるし、「人の嫌がることをしてはいけません」という小学校の時に言われたことを思い出したりもして、
その後風呂に入り、ひげも剃って娘の中学へ行きました。いっそのことバチッとスーツを着て髪も撫でつけて行こうかとも考えましたが、それはそれでわざとらしいし、
しらけた気分になりましたね。まあ、友人によると、思春期の女子の父親に対する正しいありかただそうです。それに、心底嫌っているというのではなようなので。。。

 

そして、最後にモザンビークの彼ら農民からの言葉で今年を締めくくりたいと思います。

とてもシンプルでいて、且つ力強い言葉です。
また、彼らにとっては当たり前の日常でもある大家族での食事なので触れられていませんが、日本なら「誰かといっしょに食べること」というのを付け加えればよいでしょう。

 

「わたしたちは日々食べるものがあれば、それで幸せなのです。
食べ物を得るためには、土地が必要です。みんなと暮らし、耕す土地が必要なのです」

 

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