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ぼくらのクローゼット

埋もれている価値観の中から新しい楽しみと
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「専業主夫」は是が非か

~学ぶ~ 川崎貴子さん

【黒魔女の恋愛指南vol.7】

たまたま観たそのテレビ番組は、「専業主夫」の一日をクローズアップした特集でした。
3人の小さな子供たちの育児と家事に奮闘する男性の姿(何と、パスタの麺まで手作り!)は、日本ではメジャーな存在である「専業主婦」と何ら変わりはありません。ただ、家事育児をしている人が男性であり、夫であるというだけ。しかしながら、番組の終わりにコメントした男性タレントは苦笑。多くは語りませんでしたが、彼の「なんだかなぁ~。」という「男の生き方としては納得できない。」という思いは十分に伝わる番組のまとめでございました。
果たして女性の感想は?と言えば、昨年「バリキャリ女性×専業主夫希望者」のお見合いパーティの為に相当数の高収入独身女性達にお声掛けしたのですが、「絶対に無理。」「女に食べさせてもらうという精神が気に入らない。」と総スカンで、こちらもなかなかに厳しいものでした。

●専業主夫という踏絵
先日、男性学の田中俊之さんが「女性の管理職を3割増やすなら、男性の家事育児に対しても国でエンパワーメントしないと。」と、対談の際にお話しして下さったのですが、国の施策の前に、社会の空気や我々の感情が「専業主夫」を未だ受け入れられない。私は仕事上、「女性の生き方」に付随するバイアスについてはこねくり回して考えてきた訳ですが、どっこい「男性の生き方」にもごっそりと、多様性を許されない強固なバイアスが存在していたのでした。
我が家は結婚して6年間、夫が専業主夫でした。私の仕事や娘の事情を鑑みた上、夫婦の合理的な判断として採用した訳ですが、そんな私ですら、独身時代に専業主夫希望男性を好んだかと問われれば疑わしい。「男が外で働かないというだけで、何でこんなにもやもやするのか?」私は「専業主夫」という踏絵の前でしばし立ち止まりました。そして、その答えを知りたくて、“「専業主夫」になりたい男たち”白河桃子(ポプラ新書)を手に取り一気読みしたのでした。
「大黒柱妻」の経験者ということで、昨年に白河さんから取材を受けたことがこの本を知るきっかけになったのですが、「主夫と向き合う事は、自分の中にいかに強固に男は、女は、という概念が根を張っているのか、気付かされることです。」・・・白河さん、ほんとうにそれ!今の私のモヤモヤの正体はそれ!と、冒頭からバシバシ膝を打たせていただきました。

●“「専業主夫」になりたい男たち”が教えてくれたこと
現在11万人の夫が妻の扶養に入っているそうですが、少なくとも本の中で取材を受けている「大黒柱妻と専業主夫」のご夫婦達は、とても前向きに「性別役割分担」を放棄して幸せな家庭を築いています。その理由としては、
① 夫がバリバリ働くと夫不在の家庭になりがちだが、妻がバリバリ働いても妻不在にならないから。なにせ産んでるのは妻であり、何とか子供と関わろうとするから。
② 「働いているんだから、家事育児をやって当然だろ!」にならない。むしろ、男は仕事、女は家庭と言う偏見があるからこそ、お互いに「やってもらってありがとう。」という感謝と尊敬が生まれる。
③ それぞれ働く辛さ、子供と向き合う辛さを経験しているからこそ、感謝以上の配慮(疲れてても話を聞いたり、休日子供から解放してあげたり)ができる。

というものでどれも大いに納得。世間には認めてもらえないかもしれないけれど、夫婦で解り合えればいいよね、という連帯感も生まれ夫婦は結束しやすいのです。

●無職のハニーを愛せるか問題
「専業主夫」とか「大黒柱妻」などと書くと、一部のバリキャリマッチョな女性とその夫だけが対象かと思われがちですが、実際には普通の夫婦にも起こりえる夫婦の形です。
夫が病気になったり、会社が倒産して再就職がままならなかったり、夫が働く気力を一時的になくしてしまったり…。私は、転職サービス市場で、青天の霹靂的に大黒柱妻にならざるを得なくなった女性達もたくさん見てきました。
本の最後の方に、キャスターの小島慶子さんの対談が載っているのですが、小島慶子さんもまさに自分よりキャリアが上だった筈の夫が突然働かないという選択をし、自身のバイアスの存在に悩み、夫婦で話し合った末に大黒柱になります。その心の葛藤の全てが大黒柱妻あるあるですが、「女のメンツ(社会的に優秀な男性に選ばれ、守られる事を良しとする価値観)が、こんなにも自分も相手をも縛っていたのか、びっくりしました。」というコメントがまさに秀逸でした。自分自身を先鋭的な女だと思っていたのに、こんなにもべったりと古い価値観がこびりついていたと知る事は、私自身も家族を作っていく上で大変重要な気づきだったからです。


●夫婦の合理的な選択して「多様に生きる」「柔軟に生きる」が必要
私は基本的に、「専業主夫」も「専業主婦」も目指さないで、男女共に働き、共に家事育児に参加するのが一番良いと思っています。しかしながら、どちらかが専業にならないと回らない時期があるのも、それぞれの仕事の事情があるのもわかります。大切なのは、夫婦で良く話し合って、偏見にとらわれず、その家族ごとの「幸せの形」を探す事だと思います。子育て社会リソースの少ない日本において、共働き夫婦が疲弊しまくっている現状、専業主婦が夫不在で孤独な子育てをしている現状は、社会全体をすぐに変える事は難しいけれど、夫婦単位なら変えられます。二人でキャリアダウンも良し、一時的専業主婦も主夫も良し、結果的に大切なのは、まさにカップルや家族関係のクオリティーを上げていく、ということであり、夫婦が幸せに柔軟である事こそが、この複雑な世の中において唯一の家族繁栄戦略ではないでしょうか?

 

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